ブログ更新『繰り返すオスグッド、成長痛をずっと我慢しないで!!』
繰り返すオスグッド、
成長痛をずっと我慢しないで!!
走ると膝が痛い、
屈伸が痛くてできない、
階段が登れない…など、
10代のお子さんが
「膝が痛い」
と言ったときに病院に連れていくと、
お医者さんにはこのように診断されることがあります。
「オスグッドですね。
成長痛ですから、しばらく安静にして、
運動を休んでいれば痛くなくなります」
今回のブログのタイトルは
敢えてこのように付けましたが、
そもそも
オスグッド=成長痛
といった認識の方も多いのではないでしょうか?
実は
オスグッド(正式名:オスグッド・シュラッター病)と
成長痛はまったく違うものです。
オスグッドは筋肉が骨を引っ張ることによってでる痛み。
成長痛は「骨が成長しているから痛みが起きる」
と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、
もし骨が成長することで痛みが出るのであれば、
下肢だけでなく腕などにも痛みが出るはずですし、
成長による骨の伸張によって
関節や筋肉など周辺の組織に痛みを生じる
という証拠は認められていません。
※詳しくは先でさらに説明していきます。
たしかに、
オスグッドの症状は、
運動をしないで安静にしていれば、
回復することがほとんどです。
しかし、
その期間は6か月かかることもあれば、
1年や2年かかることもあります。
いつ治るのかがわからないため、
痛がる子供をみていて、
自分のこと以上に辛くなってしまう
親御さんも少なくありません。
また、
子どもにとっての半年や1年は、
とてつもなく長い期間です。
10代という大切な時期に、
運動ができなくなったり、
部活を休んだり、
スポーツの夢をあきらめてしまうことは、
とてもつらいことです。
本当にそんなにかかるのでしょうか?
もっと早く痛みを解消する方法はないのでしょうか?
成長期におこる症状だから、仕方ないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません!
改善に期待が持てる方法はちゃんとあります。
そもそも、
オスグッドとは先に挙げたように
成長期に発症しやすいというだけであって
成長痛ではありません。
成長期だから仕方ないというものではなく、
筋肉が引っ張ることで起きているわけですから、
原因となっている筋肉に適切な処置をしていけば、
短期間での回復が期待できます。
オスグッドをはじめ、
シーバー病(踵骨骨端症)
などの成長期に起こる痛みは
痛みの出るメカニズムがほとんど一緒で
成長期に起こるスポーツ障害である
といえます。
筋肉というのは筋肉から腱という組織に変わり
必ず骨に付着します。
それにより関節を動かすことができるのですが、
筋肉は縮むことにより力を発揮しやすいため、
力を入れると腱が付着している
骨の部分が引っ張られることになります。
この負担の繰り返しにより段々と
まだ脆弱な骨が剝がれるようになるものです。
それが体の使い方により負担のかかる場所が変わってくるので
膝だったり踵だったり、
場合によっては膝でも正面、内側、外側と
数センチずれてきます。
膝に痛みがでる疾患で
オスグットの起こる年代に近い子供たちに
よくみられる症例は他にどんなものがあるかを
少し紹介しますね。
ジャンパー膝(膝蓋靭帯炎)
ジャンパー膝は膝蓋腱炎とも呼ばれ、
ジャンプや着地、ダッシュやストップなどの
急激な動作を繰り返すことによって、
膝蓋腱に生じるオーバーユース障害の1つです。
バスケットボールやバレーボールなど
ジャンプ、着地を繰り返す競技に多く、
特に競技レベルが上がってくる中学~高校にかけて
発症リスクが高くなる傾向にあります。
シンディング・ラーセン・ヨハンソン病
膝蓋骨(膝のお皿)の下方部に痛みがでます。
5~14歳くらいの男の子に多く
バスケットボールやバレーボールなど
ジャンプする競技をしたあとに多く発生します。
外観や症状からジャンパー膝と同様に扱われる場合もありますが、
この時期の男子では、
膝蓋骨が成長過程にあり、
膝蓋腱(膝蓋靭帯)よりも強度が弱いため、
ジャンパー膝を発症するよりは、
シンディング ・ラーセン・ヨハンソン病や分裂膝蓋骨、
オスグッド病などを起こす確立の方が非常に高いといえます。
また、
オスグッドやジャンパー膝と類似の症状ですが、
痛みの場所は全く違うので注意が必要です。
有痛性分裂膝蓋骨
10代のスポーツをしている子に多く
症状が出ない場合もありますが、
激しいスポーツ動作などをきっかけに
分裂した膝蓋骨にストレスが加わることで
痛みが出現します。
膝蓋骨の外側上方が分裂することが多いです。
膝蓋骨本体が痛むことが特徴的です。
このように
「膝が痛い」といっても痛む場所が
数センチずれるだけで別の病名になります。
子供たちの場合、
骨自体がまだ柔らかいため
疲労や過度の負担により骨を刺激してしまいます。
お子さんの体の成長はまず骨が成長し(伸びる)その後に
筋肉が伸びてくるため
特に成長期は体が硬くなったりすることで
骨を引っ張り痛みが出てきます。
また、
長期間同じスポーツを続けることで
体の一定の部位に負担がかかり
様々な痛み・不調が出てきます。
軽い物では運動時のみの痛みですが、
重度になってくると日常生活にも
困難を伴うようになります。
同じ障害でも年齢、性別、
スポーツ種目・動作によって
特徴があり、
個々のパフォーマンスの癖や筋力・姿勢。
あるいは食事や睡眠でも
痛みの発症する要因は異なってきます。
スポーツ障害は安静にして休養すれば、
痛みは軽減していきますが、
痛みの根本原因を理解していなければすぐ再発します。
安静にしたからと言っていつ完治するかという目安はありません。
では、
冒頭でも述べた“本当の成長痛”
とはどういったものでしょうか。
成長痛は子供のこころや体調のサイン
小児科には
反復性臍疝痛(さいせんつう)、
反復性腹痛という
原因不明の腹痛がありますが、
成長痛も同様のものとも
考えられています。
一般的に成長痛は
「ストレス」や「筋肉の疲れ」がたまり、
痛みとしてあらわれるのではないか
と考えられています。
成長痛が起きやすい成長期のお子さまは、
下肢の筋肉や骨・関節の発達が未熟で、
関節も柔らかくなっていますが、
非常に活発に動きます。
日中たくさん走り回ることによる
筋肉の疲労が夜間の痛みやだるさ、
不快感の原因の一つとなる
ことも考えられています。
また、
精神的なストレスや不安も
成長痛の原因になるといわれています。
成人でもストレスがたまると
頭痛や腹痛が出ることがありますが、
同様にお子さまの場合も心のストレスが
“下肢の痛み”
として現れることがある
という考え方です。
お子さまは成長の過程で、
生活できるようになるうえで
年齢ごとに色々なストレスを感じます。
ちょうど成長痛が多くなる頃は、
親御さんと一日中一緒だった
幼児期とは異なり、
自分でやらなければならないことも増え、
ストレスがたまる時期です。
食事やお風呂、歯磨き、
遊んでいるのを辞めて寝なければならない
母親の妊娠、
兄弟姉妹ができて
親がかまってくれなくなった、
保育園や幼稚園の通園による団体生活、
入園、入学、卒業、
クラス替え、転居といった環境の変化
こうした日常生活を
規則正しく行っていくことに
慣れていないため、
疲れてしまい、
ストレスを感じやすくなります。
また、
甘えたい、かまってほしいという気持ちが
痛みを引き起こす
ともいわれています。
さらに、
小学生になれば
友人関係や学校の先生との関係、
習い事へのストレス、
12歳以降(思春期)になると
異性関係や親子関係など、
子どもの成長に伴い原因は変わりますが
ストレスはいつも存在します。
成長痛の4つの特徴
✔夕方から夜間に、特に膝周辺に痛みが生じる。
✔痛みは30分~1時間程度で治まるケースが多い。
✔痛みを訴えた翌朝には何事もなかったように痛みが治まる。
✔定期的ではないが、繰り返し痛みが生じる。
成長痛は子供の成長とともに少なくなりますし、
後遺症が残ることはありませんので
心配せず優しく対処してあげて下さい。
成長痛と
オスグッドなどの成長期スポーツ障害
との違い、
お分かりいただけたでしょうか?
当院では痛みの程度や期間、
今後のリスクも考慮し、
運動を禁止するのか、
可能な限り運動しながら治していくのか、
大会のスケジュールなども考慮したうえで
治療計画をたてていきます。
怪我を治すのはもちろんですが
怪我をしない体づくりも一緒に取り組めるよう
治療をしていますので
お子さまが痛がっていたら
早期の受診やケガを予防する
という観点も持って頂くと良いと思います。